霧中暗中ブログ

夢も希望もない三十代の日記です

どうすることもできない感情に少し動揺した

 先日、ショッピングモール内のリンガーハットに一人で行った。私が食べたいものは一つ、長崎皿うどん。食べ物の中でもしかしたら一番好きかもしれない。誰が考案したのかわからないが、考えた人は天才だと思う。

 お店の前まで行くと中年男性二人連れがいた。一人は並んでいるのがわかったが、もう一人は並んでいるのかいないのかわからなかった。いわゆるソーシャルディスタンスで前との間に距離を取っていたのかもしれない。しかし、なんだかわからないが並んでいる方の男性の後ろに入った。そしたら、並んでいるのかわからない方の男性に「並んでる、並んでる」と俺の後ろに回れという、ジェスチャー付きで言われた。「ああ、並んでるんすね」と言って素直にその人の後ろに並ぶ自分。

 はじめは、何食わぬ顔で平常心を装っていた。しかし、だんだん情けなくなって、怒りがわいてきて、心なしかどきどきしていて、この後、長崎皿うどんを食べても、美味しくないだろうなという気持ちになった。この時の自分は、髪をワックスでセットしていて、黒マスクを装着し、一張羅のTシャツにダメージジーンズ、ハイカットのシューズに、首と手首にはアクセサリーをしていた。強い気持ちでいた。強くなった気でいた。当然他人から見ても強く見えているだろうと思っていた。それなのに心の中で「並んでる、並んでる」という男性の言葉と自分の「ああ、並んでるんすね」の言葉がリフレインして、どんどん自分が小さくなっていく気がした。

 結局私は並ぶのをやめ、長崎皿うどんを諦めた。惨めな気持ちをなんとか抑えようと必死になった。その男性に対して怒りが湧いたわけではないし、そもそも悪いのは私である。私は結局、何と戦っているのかわからなかった。並び順を注意された恥ずかしさだろうか。強くなった気でいた自分の惨めさだろうか。あの男性となのか、自分となのか。

 子どもの頃から何も変わらない。知らない人から注意されると惨めで恥ずかしい気持ちになる。私は自分の感情から逃げ出すことばかり考えていた。何も感じない、何も起こっていない。子どもっぽい感情が湧いてくるのが嫌だった。俺は大人だ、強いんだ。それなのに感情は嘘をつかない。否応なしに心に響いてくる。私は結局、目の前に起きたこの事実を受け入れることもできなければ、追い払うこともできなかった。心にわだかまりだけが残った。長崎皿うどんを食べ損ねた。